四柱八字を構成する干支は、もともと四季の変化、日の移り変わりを記述することを目的として考え出されたものであるが、古代の中国人が偉大であったのは、ただ単に天文現象の変化を記述するのではなく、四季の変化とか日の移り変わりが人にもたらす影響をも含めたものを表現しようとしたことにある。漢字は表意文字なので、その点実に都合が好いのである。
つまり、十干と十二支は、太陽の周りを回っている地球という天体の運動によってもたらされる四季とか昼夜の変化が人に与える影孵を示すもの、とも言うことができる。
解剖学者である故三木成夫氏の著書『海・呼吸・古代形象』(うぶすな書院)に、
「われわれの祖先の太古の原形質は、みな地球から分かれた―つの「生きた衛星」である。「内臓系は、悠久の進化の流れの中 で、ただひたすら宇宙空間の一遠」と共振を続けてきたことがうかがわれる。」
と名文をもって見事に言われているように、人を含めたすべての生物は、地球という天体の運動によっても たらされる、四季の循環、昼夜の交替という自然界のリズムに適応しながら進化してきたため、否応なく、そのリズムに拘束されて生きているのである。
20~30年ほど前に、人は体内に時計のようなものを持っていることが明らかになっているが、その時計は、四季の変化、日周変化を感知し、ズレを調整しているということである。
陰陽五行論は、天地という言葉で総括される四季の変化、日周変化を認識・記述する方法であり、地球という天体に適応した人という生物を論じる方法である。したがって、生物時計の仕組みが解明されれば、五行・十干とは何なのか、ということについて、何らかの答えが出る可能性もあるのではないかと思われる。
四柱推命という方法は、人という生命の根源に根ざした、目に見えないリズムを、五行・十干を通して、少しだけかいま見ることのできる唯一の方法であって、上っ面の現象のみを眺めて、サイコロを振りながら人の運命を論じる方法ではないのである。

【参考文献】
「老子・列子」監修・松枝茂夫/竹内好 訳・奥平卓/大村益夫 徳間書店
「中國哲学史」狩野直喜著 岩波書店
「易経・書経」赤塚忠訳著 中国古典文学大系 平凡社
「易経」監修・松枝茂夫/竹内好 訳 丸山松幸 徳間書店
「易経」赤塚忠訳著 中国古典新書 明徳出版社
「金瓶梅」小野忍・千田九一訳著 中国古典文学大系 平凡社
「こよみと天文・今昔」内田正男著 丸善株式会社
「月の誘惑」志賀勝著 はまの出版
「五行大義全釈」中村遍八/藤井友子訳著 明治書院
「滴天髄蘭微」任録樵増註/哀樹珊選集 五洲出版社
「星平會海全書」霞陽水中龍編著 香港上海印書館
「自然と象徴」ゲーテ著 高橋義人編訳/前田冨士男訳 冨山房百科文庫
「海・呼吸・古代形象」三木成夫著 うぶすな書院
「自然辮証法入門」原光雄著 弘文堂

「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より