この金が強く作用すると、感情に流されることなく客観的に物事を観察し、解析・分析することになる。この意味では状況判断能力とも言えるだろう。金は木を剋すため、木が情に流されやすいことと相対する、つねに冷静冷徹な面があり、度を過ぎれば残忍ともなる心情に関与することになる。古来より、金が五常の「義」をつかさどると言われてきたのは、四柱八字中に金が多くある人は、感情に流されることなく、理とか筋に則って行動するからではないかと考えられる。
したがって、重症を負っている患者を目の前にしても動じることなく、冷静にメスを振るわなければならない外科医のような職業には、この金の作用が必要不可欠な資質を担うことになる。鮮魚とか肉を調理をするような職業の場合も、金の作用が必要となる場合が多い。メスとか包丁が金属でできているから、外科医とか調理師といった職業が金に属するのではないのである。
また、最近はほとんどの職業においてパソコンをある程度使いこなさなくてはならないが、金の作用である、分析的な面は、機械相手の業務への適性に関わると言える。
金は金属であるといった即物的な関連づけを根拠にして、四柱八字に金が多くある人は機械に触れることが多いとし、職業への適性があると言われることがあるが、結論は同じであっても、思考の過程は誤りであると言える。
なお、職業の適性は、通変の視点からも見なくてはならない。五行の視点は、各職業に求められる資質・素養の有無を見る視点であると考えなければならない。
金はまた「果断可決」といわれ、方針を決定するのに時間をかけない、かからないという特質を持っている。
だから運転手のような反射的な判断能力が求められる職業の場合も金の作用が必要ということになるし、動体視力にも関わり、プロボクサーとかプロの野球選手には金が重要な役割を果たすことになる。
また、科学者・研究者にとっても、この金の帰納的思考は重要な資質であるし、前述の火の演繹的思考を兼ね備えれば、さらに適性が増すものと考えられる。実証的には、天干や蔵干に火と金が並んでいるだけで、「この人は数字に強い」とか「理屈っぼい」と考えて、ほぼ間違いないと言える。
また、金は観察力に関わる点からして、形状、色彩などの認知能力に関連することになる。そうした能力を求められる、画家、デザイナー、彫刻家等々は、金が四柱八字にあることが必要条件になるものと考えられる。

「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より