比劫は、日干と同一五行である。この「同一」であるということが、比劫のすべての事象の根幹をなすことになる。 六親としては、兄弟姉妹が配当されている。時に、異母兄弟、異父兄弟も比劫で見ることになる。また、古来、四柱八字中の比劫の数は兄弟姉妹の数を示すものと考えられていたが、少子時代となり、参考程度の意味合いしかなくなっているし、もともと四柱八字中の比劫の数から兄弟姉妹の数を論じるのは方法論的にも実証的にも無理がある。 通変の視点から知ることができるのは、その人が長男・長女として親の庇護を多く受け育てられたか、あるいは末っ子的に放任されて育てられたかどうかだけである。 割合は大変少ないが、長男・長女であっても、放任されて育てられる場合もあるため、兄弟姉妹の構成を四柱八字から断定することはできないと考えなければならない。つまり、比劫で推察することができる兄弟姉妹の多寡は不確実な要素を多く伴うが、食傷、財、官殺、印の日干との関わりから、長子的に育てられたか、あるいは末っ子的に自由に育てられたかは、ほぼ確実に知ることができるのである。したがって、育てられ方はわかるが、実際の兄弟構成までは断定できないことになるのである。ただ通変の視点から長子的に育てられたであろうと考えられるなら、9割以上は長子と考えて間違いないとは言える。その見方は後で解説することになる。 さて、比劫の事象に対する、根本的事象への作用は、同一五行であるということから、「自分と同じ立場、高さ、位置にいる人への対応の仕方」と理解することができる。つまり、兄弟姉妹がいることから、生育時に経験し学ぶ、行動様式、思考様式が比劫の作用であり、右の作用の根底にある比劫の基本的働きは、「自己のアイデンテイティーと現実社会との整合性のありよう」と言える。あるいは、個人に対峙する形で社会の存在があるとするなら、「社会との関わりの中で築いた、その人の自分自身に対する評価」と言えるものが比劫の作用なのである。幼児期は家庭が社会のすべてであるが、成長するにつれて行動範囲が広がっていく。ここで言う社会という言葉は、行動範囲の変化に伴う環境因子すべてを含んでいる。 一般的に言って、 比劫が強かったり、天干に比劫が多くあるのは、独立心が強く、自己評価が高く、競争心も旺盛である。ただ比劫があまりにも強過ぎるのは、協調性がないため、社会や組織・集団からはみ出してしまうことにもなり、比劫が弱過ぎるのは、寄らば大樹的な考えが強過ぎたり、社会に馴染めず、逃避的になったりするようなことにもなるのである。したがって、比劫の強さは、独立自営業の適性を見る一つの視点とはなるが、比劫が強いからといって、すべて独立自営業に向いているとは言えない。 ただし、こうした比劫の作用は、一生不変のものではなく、大運によって変わる要因がある。四柱八字で比劫が弱くとも、比劫が旺じる大運に巡れば、比劫が強い事象が現われることになるのである。このことは他の通変においても同様である。その実際の見方はあとで説明することにする。 「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より