印は日干を生じ、強める五行であることから、その事象は「生じ、強める」という作用を根幹とする内向きに働く事象に関連することになる。その基本的な作用は、「生命を維持するという究極の目的の実現に伴う、肉体的、精神的欲望・欲求の根源」
と言える。あらゆる生物はその生命を維持するため、本能的に快楽を求めるようになっている。苦痛、不快感を感じることを回避するように遺伝子にプログラムされているのである。これは人間も例外ではなく、この快楽・心地よさへの指向が印の作用なのである。印が良好な作用をもたらせば、適度な運動と飲食と休養が保たれ、心身ともに安らぎを得ることができ、そうした状態が長く続けば、 結果として長寿になることができるのである。印が不良な作用を発すると、好きな物ばかり食べ、快楽主義に陥ったり、不快なことは避けて通り、自分の好きなことしか関心を示さないことになり、おいしいと感じる物しか食べないため、偏食になって結果的に病気になる原因を作ったりすることになるのである。極端な例であるが、印は、アルコール中蒋、ニコチン中毒、薬物・麻薬中毒、といった中毒症状にも関与することになる。
また、印が良好な作用を発揮できないことによる、ごく普通の生活の中の事象としては、多忙なため生活が不規則になり、十分な休息を取れないといったこともある。流年で、印が必要なのに印が不足する、逆に印はこれ以上不要なのに印が強くなる、といった状態になるなら、その年は身体的負担が大きい、つまり多忙であろうと予知することができる。ただし、この事象は、印を剋する財と、印を生じる官殺との関わりによって、その状況が変化することになる。
「好きこそものの上手なれ」という言葉があるが、一芸に秀でるのは印の作用が深く関わっている。この印の作用は、職人、技術者といった技工の分野のみではなく、専門的な知識を持つことも含まれる。文鉦業、楽器の演奏家、学者をはじめ、経理、プログラマー、調理師、理容師、等々、印の作用はあらゆる専門的職業、技術職に必要である。中には、修行・訓練という名目で、多くの苦痛とか苦労に耐えながら専門的技術と知識、あるいは芸を身につける人もいるが、そうした場合は、印のみではなく官殺の作用が関わることになる。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より