人は誰でも自分の未来を予知する感覚受容器を持っています。もしその気になれば、テレビの画面を見るように、自分の未来を見ることができます。そしその両面に映し出されたことが好ましいことであれば、自信を持ってその先へと歩んでいけばいいし、もし好ましくなければ、現在を変えることによって、その好ましくない未来を変えることができる。潜在意識のメカニズムとはそのようなものなのです。

問題は、あなたが自分にそなわったそうした潜在意識のメカニズムを、心か信頼するかどうかにかかっています。信頼することができれば、あなたはそれを大いに活用したいと願うでしょう。そして活用の方法論を学ぼうとすることでしょう。信頼できなければ、あなたはそうした理論や説明に何の興味も示さず、「人生不可解」を胸に生きることになるでしょう。それはちょうど高性能のテレビを持ちながら、決してスイッチを入れようとしない人と、それを大いに活用する人との差といえます。

中国に生まれた『易経』は、東洋哲学の真髄であると同時に、日常生活の疑問や間題の指針を得る書として、古くから活用されてきました。きわめて難解な書であるにもかかわらず、数千年にわたって活用されてぎたのはその実用性にあったといっていいでしょう。仏教経典やバイブルとはちがったこの実用性は「易占い」(えきうらない)として現代にも生きています。

マーフィー博士は「易占い」になみなみならぬ興味と理解を示し『SECRETS OF THE I C IHN G』と題する一冊の本を世に送りました(邦訳『易の秘密』産業能率大学出版部刊現在絶版。)博士が「易占い」に興味を抱いたのはなぜでしょうか。それは博士自身の言葉をかりれば、易占いによって得られる結果が「われわれの深奥に潜む潜在意識の回答」にほかならなかったからです。博士はその著作の中で「易を神秘的、あるいは非科学的に受けとるのはまちがいである。それは、人類の社会や今日流布されている偉大な宗教が出現する以前から存在していたものであり、それは宇宙の法則、真理といっていいものだ」と述べています。

本書はこのマーフィー博士の「易占い」の考え方を基礎に、難解な『易経』を誰にもわかりやすく解説し、読者自身が自分で判断できるようにまとめたものです。迷ったり、苦しんだり、悩んだりしたときの指針としてばかりでなく、上昇し、成功し、豊かで満ち足りた人生を獲得するために、本書を縦横に活用されることを願ってやみません。

 

昭和61年1月1日

しまずこういち

「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)(しまずこういち氏は翻訳者)