さて、日干の強弱を知るということは、日干に直接的、間接的に影響を与える、四柱八字中の干の生剋・幇の相互作用の結果、日干にどれほどの力量があるかを評価することである。日干の強弱は、日干を中心として考えることなので、通変を用いて説明されることが多い。
四柱八字中のすべての干は、月の蔵干が示す旺相死囚休によって質的な強さを左右され、日干は隣接する干から生剋・帯の作用を受ける。日干に隣接する干とは、日の蔵干、月干、時干のことで、その他の干は間接的に日干に影響を与えることになる。つまり、旺相死囚休という条件のもと、日千に隣接する干が、日干を扶けたり、生じたりすれば、日干は強と評価され、この逆であれば、日千は弱と評価されることになるのである。
また、十干をあたかもエネルギーを持った粒子のように扱い、日干の強弱を説明している四柱推命の書がある。しかし、そのように日干の強弱をエネルギーとして評価しようとすると、四柱八字中の干と干は、相互作用の結果、エネルギーが発散したり収束したりして収拾がつかないことになるはずである。
例えば、日干に印が隣接していると、印から継続的に日干にエネルギーが補給されることになり、日干のエネルギーは無限大に発散してしまうし、逆に印は、どこかからエネルギーが補給されない限り、枯渇してしまうはずなのである。干の生剋・樹の作用を、熱とか電気のエネルギーと同一視するのは無理なのである。
十干はエネルギーをもった粒子ではなく、気が流通するシステムを構成する要素とか節と考えるべきである。だから、「日干が弱い」とは、「日干が弱められやすい環境にある」ということであり、「日干が強い」とは、「日干が強められやすい環境にある」ということであると考えなければならない。だから、ただ単に「日干の強弱」というのは、適切な表現ではないと言えるが、ほかに端的で適当な表現方法もないので、以上のことを理解していただいていることを前提として、以下、日干の強弱という表現を使用することにする。
さて、四柱八字中には、日干を除外すると三つの天干があり、四つの蔵干がある。隣接する干と干、あるいは干と蔵干、あるいは蔵干と蔵干は相互に作用をおよぼし合うことになり、その並び方により、四柱八字中には、その四柱八字固有の五行の気の流れが形成されることになる。
そして日干が強となる原因は次の二つしかない。その一つは、

〇比劫が隣接して日干を扶けている。
もう―つは、
〇印が隣接して日干を生じ助けている。
ただし、比劫の影響が強い場合と、印の影響が強い場合では、強さに質的な相違が発生することになる。そして、日干が弱となる原因には次の三つがある。
〇日干に食傷が隣接して、日干がその気を洩らさなければならない。
〇日干に財が隣接して、日干が財を剋さなければならない。
〇日干に官殺が隣接して、日干が官殺に剋されている。
ただし、具体的事象を見る段階になると、何が原因で日干が弱いのかを、質的な相違として区別しなければならないことになる。また、
〇日干が食傷に洩らすことによる力量的マイナスは、財、官殺が隣接することによるマイナスに比較して小さい。
そして、視点を変えて言うなら、
〇日干が印に生じられることによる力量的プラスは、財、官殺が隣接することによるマイナスより小さい。ということになる。さらに、
〇陽干の比劫によって日干が扶けられる力量的プラスは、日干が陽干の財を剋するために必要な力量的マイナスを補い得る。と言える。そして、
〇陽干の官殺に剋されることが、日干にとって力量的に最大のマイナスとなる。
さらに言うなら、陰干と陽干の特性により、陰干である日干が、陽干の官殺に剋されることが、最も影響を大きく受けることになる。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より